年金生活者は申告不要

3党合意をうけて今年から創設適用
 6月30日公布された3党合意23年度税制改正法の目玉は、年金者の申告不要制度でしょう。
毎年の早春の喧騒を彩る所得税の確定申告の風物詩は、10数年前から「自書申告」のスローガンのもと、年金所得者の申告手続の急増に備えていました。今年からは、それを更に進化させて、「申告不要」ということにしてしまいました。

申告不要制度の対象
 年金のすべてについて申告除外ということではありません。制度創設の趣旨は、年金者への利便を唱ってはいても、行政サイドの少額多数者対象事務コストの削減です。

 年金者でも高額少数者に対しての申告義務の解除はまったく予定していません。その線引きは、
① 年金の種類は公的年金等に限定
② 収入金額が400万円以下
③ それ以外の所得金額が20万円以下
です。年金の平均収入より高いので、年金者の7~8割を申告不要対象にしようとしています。

申告不要は税の非課税や減免ではない
 申告不要で税の減収は予定していません。税収は確定申告手続きによってではなく、源泉徴収や特別徴収の手続きによって確保する予定です。

 とは言え、今までの年金に係る源泉徴収票では税額の算出過程が不透明で、その正確性のチェックがどの程度のものなのか疑問の多いところでした。

扶養親族等申告書の提出を承けて
 源泉徴収の税額は、年金受給者が提出する扶養親族等申告書の記載内容によります。

 ただし、その記載が正しいか否かを年金支払機関はチェックしません。給与所得者の扶養控除等申告書についても同じです。提出されたものを正しいものとして信じて源泉徴収等の事務処理をするだけです。不正記載への罰則もありません。

源泉徴収事務の強化が主眼か
 年金には年末調整のような課税所得を精算する場がなく、年金支払機関も複数の場合が多く、正確な計算が困難です。そんな中で申告不要の導入をするとなると、源泉徴収による税の確保が要所となります。今後はそこの制度改善がクローズアップされてきそうです。