賃料改定に関する条項の効力

特約で何でも決められる訳ではない?
 前回の記事では、借地・借家契約の賃料改定において、複雑なプロセスをたどることをお話ししました。

 そこで、賃料の改定に関する具体的な中身について、予め契約でうたってしまおうという考えが出てきます。

 しかし、内容次第では定めたとおりの効力とならないことがあります。ここで、具体例を挙げながらご説明します。

賃料を増額しない条項
 一定期間賃料を増額しないとの条項は、借主に不利でない内容のため有効です。
賃料を減額しない条項

 一定期間賃料を減額しないとの条項は、借主に不利な内容の契約のため、借地借家法により無効となり、借主はこの条項にもかかわらず、減額請求ができます。その内容については、昨日の記事でご案内のとおりです。

自動的に改定する条項
 例えば、3年毎に5%ずつ増額するというように、賃料を自動的に増額又は減額する条項です。この場合には、その改定の基準が借地借家法の規定する経済事情の変動を示す指標(固定資産税等の負担の増減、物件の価格の騰落等経済事情の変動、又は、近傍同種の賃料)に基づいて相当なものである限り、その条項は有効となります。また、当初は有効とされるべき状況だったが、当該改定基準を定める基礎となっていた前提事情が失われたことにより、その条項で賃料額を定めることが不相当になった場合には、契約当事者はその条項に拘束されず、借地借家法による賃料増額(減額)請求ができると解されています。

特殊な契約について
 以上は、通常の借地・借家契約におけるご説明でしたが、借地借家法は、双方当事者になるべく賃料増減額請求権を保障し、また、借主を不当に不利益な地位に縛り付けないよう配慮したものと考えられます。

 これに対して、例外として、一時使用目的の借家契約、定期建物賃貸借契約の場合には、借地借家法の賃料増額請求権の規定の適用はありませんので、当事者間の契約にて賃料の増減額を定める条項は、公序良俗に反しない限りは有効と解されます。